小林賢太郎にとっての観客
ラーメンズのコントは、役者としてだけでなく、演出・脚本も手掛けている小林賢太郎という劇作家によって書かれている。
小林賢太郎の脚本(戯曲)はすぐれたすぐれた文芸作品であり、文芸作品として鑑賞しても、十分に面白い。
ファンの中には、ファンのコミュニティの中で朗読会を開く者もいる。
しかし、小林賢太郎は自らの作品を、何よりも劇場で上演されるもの。観客によって受容されるものとして書いた。
あらゆる劇作家の例にもれず、小林賢太郎も、自分が想定しているやりかたで観客が反応することを期待したに違いない。
観客を笑わせたいと思う箇所で実際に観客が笑うことを、あるいは、観客を劇に集中させたいと思う箇所で、観客が舞台で起こっていることにだけ集中することを、臨んだにちがいない。
だから小林賢太郎は、どうすればそれが可能になるかについて、最新の注意を払いながら、戯曲を書いたと考えねばならない。
つまりこのブログは、小林賢太郎がひとりの劇作家として、どんなことを考えながら作品を執筆したか、観客を自分の望み通りに反応させるためにどんなたくらみをめぐらせたのかという問題を、検討しようとするのである。
小林賢太郎が劇作家としてたくらみをめぐらすに際して、何よりも慎重に吟味したのは、おそらく、どの段階でどんな情報をどのようにして観客に提供するかという問題だったであろう。